安子の気持ち

「股引が無いから寒い」
デイサービスから
帰った父が言いました。

えっ!寒くなる前に買って
ディにも履いていくから
名前も付けたのに!

母に尋ねても
私が作ってきた卵焼きを
むしゃむしゃ食べて上の空。

今までは便所の掃除をした私に
「京子にこんな事させてごめんね」悲しそうに言ったのに
この頃は反応が鈍くなり
何も言わなくなりました。

ふたりともとにかく
早く夕飯を食べて
早く薬を飲みたいのです。

そんな両親の顔を
見ていると
「もう頼りにはできないんだな」
寂しく悲しく不安になり

夫が戦死して
家族まで失くし
婚家を出た安子。
乳飲み子を抱えて
どんなに不安で
心細い事だろう…
と思いました。