伯父が亡くなる数日前
病室に入って伯父に声を掛けると
荒い息をしながら
「白湯をくれ」と言った。

「待ってて!看護師さんに聞いてくる」
慌ててナースセンター行こうとした時
首を横に振って聞いては駄目だと言った。

水を飲ませる事を止められていた。
来てくれた看護師さんが
小さい綿花を湿らせて
伯父の口の周りを拭いてくれた。

その時の伯父を忘れられない。
あの時どんなに噎せても
寿命を縮めることになっても
私がごくごく飲ませてやればよかった。

「こんなに苦しんでる!
どうせもう直ぐ死ぬんだから
水くらい飲ませてやってよ!」
看護師を怒鳴りつければよかった。

こんな事があって‥

あんなにも懇願されても
飲ませてやれないことが辛くて
1日だけ会いに行かなかった。
その日の夜伯父は亡くなった。

家に帰って来た伯父の亡骸は
枯れ木のようにカラカラで
生前の面影は全く無かった。
誰もがその姿に驚いた。

亡くなる寸前まで元気でいた
祖父母や伯母達の亡骸とは全く違っていた。

老人ホームにいる時
「味噌汁の量が少ないんや頼んでくれんか」と言われて
施設の人にお願いしたけれど
聞き入れてはもらえなかった。

腹一杯の味噌汁も
水さえも飲めずに死んで行った伯父‥

喉が渇いて苦しい中
頼れる人は私だけで
どんなに私を待ちわびていたか‥

綿花を貪るようにした伯父の姿を思い出すと
今でも辛い