郵便局の帰りにマリンタウンまで歩いた。
一月の海は悲しくなる
どんなに穏やかでも。

忘れもしない‥
ゾウゾウ鼻付近で身を投げた女の子を思い出す。

その子のお母さんから
好きだったと聞いた「エクレア」と花を
命日に供えてた。
10年間ずっと。

櫓の後ろにお供え物をして手を合わせると
崖下から吹き上がる強風
高波が岩にぶつかる音
風の吹き荒れる音しかなくて
どんな気持ちで海に身を投げたのか
悲しくて可哀想でたまらなかった。

鵜入にはおばあちゃんが住んでいて
直ぐそばまで来ていたのに‥

心配を掛けたくなかったのか
怒られると思ったのか

あれから15年以上‥
お供えには10年を区切りに行かなくなった。
それでも忘れてはいない。
お母さんが「忘れられるのが悲しい」と言ったから。

女の子のおばあちゃんのお葬式の日
式場の鵜入の寺に行く前に
ゾウゾウ鼻に立ち寄って手を合わせた。

その夜私は夜中に高熱を出して
ひどい状態になり
1週間入院する事になった。

その頃東京で占い師のアシスタントをしていた女性と
仲良くしていた。

高熱の話しを聞いた女性は
「京子さんは優しいから霊がついて来たんだね。
可哀想にって心の中で言ったでしょ?
そう言ってはいけない。
「成仏してね」と言わないと。
これからそこに行く時は
お清めの塩を身に付けてね」

バカにされるから家族以外にはこの話はしなかった。

ゾウゾウ鼻の冬の景色が
余りにも殺伐としているので
せめて桜でも植えられないものだろうか‥
辛い事を思い出す冬を越えて
残された家族の慰めになる‥
誰に相談したら良いんだろう
地元の政治家だろうか‥
真剣に考えていた。