漆の箱

 

 

 

 

 

 

 

漆の色と絵柄が渋くて
「好きだな」と思っていた。
艶々煌びやかでないところが良い。

何に使うものか分からなかった。
茶びつ?茶びつは丸い。
硯入れにしては大き過ぎるし
深過ぎる。

ずっと物置きに置いたままでした。

展示会で眼鏡を選ぶ時
「あの方に似合いそう」
お客様の顔が浮かぶ。

この箱を手に取る度
ある方の顔が浮かんだ。

遠く離れた東京で
「刺繍の半襟」入れになった。

綺麗な物を入れてもらえる事になって
ずっと空っぽだった箱も
喜んでるだろうな。