泣いた本

大人になって初めて本を読んで泣いたのは
若い頃好きだった「向田邦子」
「字の無い葉書」だった。

仕事帰りの列車の中で
涙が出て仕方なく
人目もあるから
我慢しようとすればするほど
泣いてしまったと思う。

映画や小説は
自分と重ねるらしい‥
「防火桶の前で幼い妹の肩を抱いて男泣きした」に自分の父を重ねたのか
痩せ細った妹に私を重ねたのか‥

教えて頂いた
ドリアン助川の「エッセイ」を探したけど
見つからず‥
図書館の薄暗い本棚と本棚の間で
「と と と‥」
人差し指を流していた。
「満月」「母」の文字に指が止まり
その場でパラパラめくって
もう涙がこみ上げてきた。
「パタン」と閉じて窓口に急いだ。
先にいた男の人が「どうぞ」と言ってくれた。

大急ぎで家に帰って
一気に読んだ55ページ目の
終わりの文に
もう泣く事を止められなくなった。

人は出会うべき人と出会うべきタイミングで
出会うと思う。
本もそうなのかも知れない‥